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2011年3月13日日曜日

5. ピエール・キューリー・ノーベル賞受賞講演、マダム・キューリーの序文

ピエール・キューリー・ノーベル賞受賞講演
吾等はラジウムが罪深い人たちの手に入るときは、きわめて危険であることを知る。
そしてここに於いて、吾等は果たして、人類は自然の秘密をより多く知る方が有利か、又果たして人類はそれを利用するに十分な程進化しているのか、あるいは、この知ることが却って有害になりはしないかと疑う。ノーベルの発見はその適例である。強力な爆薬は我々に驚嘆すべき仕事をなさしめた。一方それは又国民をして戦争へと追いやる、罪深い人達の手中に於いては、破壊の恐るべき方法である。私はノーベルと同様に、人類が悪よりも多くの善を、新しい発見から見出すことを希ふものである。
                                              ピエール・キューリー

   マダム・キューリー・“ピエール・キューリー傳”序文
ピエール・キューリーの伝記を書くことを、私はためらいつつ引き受けた。私は、むしろこの仕事を彼の傍らにあって、彼の幼年時代及び前後を熟知している彼の親類、又は彼の
兄であり少年時代の好伴侶であって、温かい愛情で結びついているジャック・キューリーは、彼がモンペリエ大学へ任命されてから離れて生活していたとの理由で、この任を引き受け得ないと思っている。従って彼は最も良く彼の弟の生涯を知り、了解しうる者は、私を措いて他にいないと考え、私に彼の伝記を書くことを強く勧めるのであった。彼は集め得たすべての個人的思い出を私に提供した。この重大な資料に、私は夫によって語られた細かい点を付加した。かくして私は、私が直接知らない時代の彼の生涯の部分を再建設した。他方私は、私達の一緒に過ごした年月の間に、彼の人格から得たところの深い印象を忠実に再現することを試みた。
この小編は決して完全なものではないだろう。しかしながら私は、ピエール・キューリー
について、この小冊子の与える像が、少しも歪められていないで、彼の思い出を保つための一助となることを希つている。更に私は彼を知っている人達に対して、彼らが彼を愛する所以を見出しさしめることも希つている。

                           マダム・キューリー

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